シャンゼリゼ


ゆっくり9時半起床。のんびり支度をして、サン・ラザール駅のスタンドでレキップ紙を手に入れた後、カフェでお茶。おいしいエスプレッソだった。段々と、エスプレッソが好きになる。レキップの表紙はもちろんカデル・エバンス。
ホテル前で友人と待ち合わせ、パン屋で買ったパンを片手に歩いてシャンゼリゼに向かう。サン・ラザールからコンコルド広場までは、ほぼ1キロの道のり。天気も晴れ、ちょうどいい散歩になるだろうと思ったが、予想以上に公園周りの警備が厳重ですんなり入れず、回り道をすることに。シャンゼリゼ通りに着いた頃には、13時をまわっていた。


観客がすでに大勢来ており、フェンスの前にびっしり。それでもノルウェー応援団の隣にあった隙間に入り込んで、どうにか観戦することができた。私たちより後から来た人たちは、たぶんほとんど見えなかっただろう。
会場全体は、完全に大きなお祭りをやっているという雰囲気。人、人、人、で埋め尽くされている。屋台もそこそこ出て、シャンゼリゼ通りに面したカフェには人がびっしり。ブティックでも音楽を掛けて盛り上がっている。後で聞いたところでは、レース中は電話ボックスの上にまで上って観戦している人がいたとか。



屋台も日本のお祭り会場とさして変わりない。水やジュース、ビールなどの飲み物、クレープ、ワッフル、アイスクリームなどの甘いもの、サンドウィッチやホットドッグも置いていた。ツール独特なのは、グッズ販売のトラックなどがあったところ。これも公式なグッズのセットの他に、非公式と思われるグッズを売るトラックもあった(ラインナップが明らかに違う)。
会場に着いて観戦場所を決めた後は、ひたすら待つ。キャラバン隊の到着が15時過ぎ、プロトンはその後更に一時間半後くらいの到着だったから、結局4時間近く立ちっぱなしで待っていたことになる。私たちの前に陣取っていたノルウェー応援団もぐったり。
凄かったのは、私たちが到着する数時間前からフェンスの最前列で待っていたであろう老夫婦が、座ることなくずっと立ちっぱなしでプロトンを待っていたことだ。70歳は下らないだろうという二人ともが、ずっと立ちっぱなし。この日は日射しが当たるととても暑かったのだが、彼らはまったく問題なさそうに立ち続けていた。途中で、おじいちゃんのほうが日射しを避ける帽子を新聞紙で作って被っていた。


15時少しすぎにキャラバン隊が到着。どの車も大音量でダンス・ミュージックを流し、蛇行し、クラクションを鳴らし、ガタガタ車両を揺らしながら通り過ぎていく。彼らも選手と一緒に3週間走り続けてきたのだ。



その後、さらに1時間ほど待ってようやくプロトン到着。会場の雰囲気がすこし緊張し、観客が興奮しているのがわかる。遠くから徐々に歓声が近づいてきて、対岸の観客もカメラを構え始める。すぐそこまで来ているのがわかるが、生憎ノルウェー応援団の背が高すぎてさっぱり様子が掴めない。もたもたしているうちに選手はあっという間に目の前にやってきた。人と人の肩の間からプロトンが猛スピードで過ぎていくのが見える。さすがに速いが、思ったほどではない。1周目は集団のまま通りすぎた。警官もカメラマンもみんな見てる。


その後、2周目から7周目までずっと逃げが続いたのには驚いた。このまま逃げられるんじゃないかと思ったほど。場内実況はフランス語のみだが、「ロワ」「リブロン」という名前が先頭集団に入っているのはわかる。あとは時々「ロラン」「ヴォクレール」「ジルベール」。ほとんどフランス人選手の名前しか呼ばないのにはちょっと笑ってしまった。私たちが後で大騒ぎをしているせいか、最後の方ではノルウェー応援団の人も少し場所を開けてくれたような気がする。それでもやっぱり、大きな背中であることには変わりなかったけれども。



ゴールの位置を勘違いしていて、アナウンスで「カヴェンディッシュ!」と連呼しているのがゴールのことだとはしばらく気付かなかった。観戦していた場所を離れて、場内のオーロラビジョンで確認してようやく彼がステージ優勝とマイヨ・ベールを獲ったことを知る。
観客は終了間際になると表彰台の方へ移動し始め、カヴェンディッシュの勝利と共に大歓声と拍手。私たちがいたのは表彰台にほど近い(とはいえ500メートルは離れた)場所だったので、フェンスぎりぎりまで寄ると表彰台が見えたらしい。私が場内モニタで確認している間、オットが豆粒大のエバンスを写真に撮っていた。


表彰式の間にフェンスの一番前まで寄り、パレード・ランを待つ。日本人のように見える報道関係者が、シャンゼリゼの中央あたりに立って何か話しながら選手をずっと映していた。ストリーミングをしていたのかもしれない。
パレード・ランは、どの選手もほっとしたような雰囲気で走っていく。中でも、ぐったり気味のレディオ・シャック、仲の良さそうなユーロップカー、ガーミンやエウスカルテル、どことなくぎこちないサクソバンクとレオパード、報道陣に囲まれ大変そうな(でも楽しそうな)BMC、が印象的だった。BMCはどの選手も確かめるような足取りで、ゆっくりと進んでいた。


















すべて終わって、シャンゼリゼを後にする。帰り途、カフェの前でたむろしながら選手が通るのを待っている人が大勢いた。きっと、毎年あの道を通って(あるいはファンサービスをしながら)帰るんだろう。私たちはそれどころじゃなく疲れきっていて、そのままホテルの近くのレストランへ直行。食事をし、友人と再会を約束しながら別れる。ホテルでニュースをチェックし、早々に眠る。


7/23(土)パリへ:http://d.hatena.ne.jp/asukakyoko/20110723
7/25(月)ハイデルベルクへ:http://d.hatena.ne.jp/asukakyoko/20110725