パリへ

ツール・ド・フランスシャンゼリゼゴールの前日。
午前中の列車でパリへ。ハイデルベルクから西のカイザースラウテルンザールブリュッケンを通りすぎ、フランスの北側からパリに入って行く。車両はDBのICEだが、フランス行きなのでアナウンスにフランス語が入る。ときどきあるというパスポートチェックもなくスムーズにフランスへ。途中、牛(白、黒、茶色、まだらなのといろいろいた)の放牧地帯と穀倉地帯、風力発電地帯を過ぎてパリへ。パリは街全体が古い。曇っているせいもあったかもしれないが、くすんだ色をしていた。


そのままホテルのあるサン・ラザールへメトロで移動。カルネという10枚つづりのチケットを購入。一枚ずつ買うと1.5ユーロだが、10枚まとめて買うと12.5ユーロとなり、少し割安なのだ。通し券を買うほど交通機関を使うわけでもないし、三時間以内なら途中下車しても再度乗れるとのことでこれを購入した。
サン・ラザールに着いたあたりでざっと通り雨。日が陰って風もあり、非常に寒い。うろついて昼食をと思ったが、諦めて先にホテルにチェックインする。部屋は狭かったが、そこそこ綺麗で清潔。この時点で二人とも相当疲れており、この日予定していたルーブルを諦めようかという雰囲気になるも、とりあえずご飯を食べてから考えようということで外へ。雨はすでに止んでいた。
付近をぐるりと一周してみるが、どこもやたらに高い。結局ファストフードのようなパン屋のイート・インへ。ドイツと同じ感覚で「カフェをふたつ」と頼むと、エスプレッソが出てきてしまって、顔を見合わせて「あ〜」となる。ハイデルベルクでは「カフェ」は大抵大きなカップの普通のコーヒー。パリに行って最初に学習したことが、この「カフェ=エスプレッソ」だった。ホットドッグとキッシュ(いろんなチーズの味がした)が予想外においしかったことで二人とも一気に元気になる。予定通りルーブルへ向かう。
ルーブルルーブル。8年前に来た時も、今回も、それ以上のものを感じなかった。I.M.ペイのピラミッドはやや汚れ、曇り空のせいでやっぱりくすんで見える。入場のための長蛇の列は、並んでみると思いのほかするする短くなっていき、30分と待たずにピラミッドに入れた。方々から様々な言語が聞こえる。日本語はほとんど聞こえず。


チケットは10ユーロ。ひとまず彫刻は無視して2階の絵画から見ることに決める。ミュンヘンのピナコテークと同じようなラインナップに既視感を覚えつつも、やっぱりルーベンスに圧倒される。ひとつの部屋がまるまるルーベンスルーベンスまみれ。ルーベンスの筆の踊るような感じがとても好きだ。描かれたひとりひとりの人物の性格や、場面の前後が見えてくる。溢れる情感を筆先から滴らせながら描いたのじゃないかという気がする。


フランス絵画の一角にいくと、ルーベンス的なものを受け継ぎつつ、やっぱり全体的に「ふわっ」としている。綿菓子みたいで重さがない。イタリア絵画も見た。とにかく豪華。緻密で、重みがあり、層が厚い。率直に、イタリアは豊かだったのだと思った。モナリザは、ほとんど人垣しか見えない。ルーブルそのものと同じく、モナリザも、あまりにあちこちで目にしすぎたせいか、あるいは私の感性が貧しいだけか、ただそこに実物があるということ以上のものを感じられなかった。



0階まで下りてミケランジェロの彫刻あたりで閉館時間になった。ちなみにルーブルのお手洗いはジャンボロール仕様。閉館間際でジャンボロールはほとんどなくなりかけていた。一日どれだけの人がトイレを利用しているのか考えるだけで眩暈がする。
ピラミッド前で大学の友人と待ち合わせていたのだが、ぼんやり探していると男性にシャッター押してくれと頼まれる。ルーブルに入りたかったのに来たら閉館だったとのこと。今度ドイツまで行きたいんだけど、というのでいくらかかるとか何時間かかるとかそういう話を延々と。立ち話しているところへ友人到着。サンジェルマンデュプレへ向かう。
メトロで移動中、物乞いが電車に乗り込んで窮状を訴え始めた。パリではよくあることらしい。
サンジェルマンデュプレの、カフェ・ド・フロールで夕食。メニューはシンプル。オムレツ、サラダ、チーズにリエット。ワインを少し。この界隈がサルトルらの溜まり場だったという話。ドイツとフランスの違い、海外で働くことについていろいろと。彼女と会うとリラックスする。会うたびにいろいろなことが彼女の周りで進展していくからかもしれない。考え方や関係は何も変わらないのだけど、一方で時間や場所や、他に何か確実に変わっていくものがあって、お互いに、それを確かめ合っているような気がする。次に会うのはたぶんドイツで。今度は私が案内することになるだろう。
翌日の予定を取り決めて、別れる。ホテルに戻り、寝る支度をしたら、あっという間に眠ってしまった。でも眠りは浅くて、夢を沢山見た。




7/24(日)シャンゼリゼhttp://d.hatena.ne.jp/asukakyoko/20110724
7/25(月)ハイデルベルクへ:http://d.hatena.ne.jp/asukakyoko/20110725