内田百けん『第一阿房列車』
- 作者: 内田百けん
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/04/24
- メディア: 文庫
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淡々と述べられている事柄は、列車のタンタンというリズムとも似ており、またその安定感は、断続的な読書であっても一続きのものとしてむしろ「戻ってきた」という感覚すらある。ああそうか、百けん先生は昨日はこのあたりまで進んでいたのだったな。そうか、お酒を買ったのにお燗に出すのを忘れて持って帰ってきてしまったのだったな。そういうことを思い出しながら、さて、今日はどこまで進むのだろう、という、不思議な共振めいた時間を過ごすことになります。これは電車の中で読む本として、想像以上によい本であると思いました。部屋で読むより、断然電車の中で読むべき本です。これまで人が目的もなく電車に乗るのを理解できずにいましたが、これを読んでみると、なるほど、ちょっとふらりと電車に乗ってみたくなるのでした。