生物と無生物のあいだ

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

すいーっと読める、生物の本。すいーっと読めるのだけど、ところどころさりげなく、きちんとした主張をしているところがお上手。読み物としての完成度が非常に高いです。
ところで、

 しかし私は、現存する生物の特性、特に形態の特徴のすべてに進化論的原理、つまり自然淘汰の結果、ランダムな変異が選抜されたと考えることは、生命の多様性をあまりに単純化する思考であり、大いなる危惧を感じる。
 むしろ、生物の形態形成には、一定の物理的な枠組み、物理的な制約があり、それにしたがって構築された必然の結果と考えたほうがよい局面がたくさんあると思える。分節もその例である。(pp.144-145)

という箇所は、けっこう論争的なんじゃないだろうかと思ったのですが。現在の生物学において、どれほど進化論的原理が受け容れられているのか、それがどのような形で息づいているのかはこれから調べねばならない課題なんですが、それにしても、これほどはっきりと、部分的にせよ、形態の進化論的形成を否定しているものを、はじめてみました。それともむしろ、こちらの見解の方が常識なのかしらん。