「ペルセポリス(Persepolis)」「パラダイス:希望(Paradise: Hope)」

連休ですが、近所を散歩してばかりの私です。なんてことない日常を、なんてことなく過ごせる幸せをかみ締めています。さて、みなさま、いかがお過ごしですか。


ペルセポリス(Persepolis)」

ペルセポリス [DVD]

ペルセポリス [DVD]

イラン人漫画家、マルジャン・サトラピの自伝的物語をアニメ化した作品。興味深く観ました。
戦争、紛争、政変、虐殺。ほぼ実話だというお話の中で、たった20年あまりの間にマルジャンの周囲ではめまぐるしく社会が変わっていきます。自由だったものが禁止され、手をつないで歩くことさえ許されなくなり、国外への移動も制限される。そんな中でどうにかオーストリアへ留学してみるものの、自国の状況とのギャップに耐えられなくなり帰国。その後、やはりイランでは生きていけないと感じて再度の移住。
自分自身がドイツで数年過ごしていたときのこと、地震があったときのこと、そしてそれから帰国して今までのこと。いろいろ個人的に思い返すことも多く、自由、生きること、国のこと、家族のこと、を考えてしまうお話でした。どの土地で暮らすにしろ、苦労はつきものですし、決して楽しいことばかりではありません。不自由もあります。差別もあります。ただ、今はまだ、私にはある程度の移動や移住が許されていて、資金さえ許せば、生まれた以外の場所でもどうにか生きていくことができます。私は、選ぶことができる。少なくとも、今は。
マルジャンには、移住はおそらく他に選択の余地がない決断であったのでしょうし、それは彼女自身がどうにかできる問題ではない。それでも彼女は漫画という方法でそれを伝えることができ、彼女はその責任を果たした。彼女は聖人ではありませんが、責任を果たせるくらいには、成熟した知性のある大人であったということだと感じました。
私は、自分が社会の中で果たすべき役割をなしているだろうか、と自分自身に問わずにはいられません。私は、ただ安全の中で、自分自身だけがよかれと生きてはいないだろうか。私は、自分が社会から与えられたものを、ちゃんと社会に還元できているだろうか。そもそも、私は家族をきちんとケアできているだろうか。自分自身の今ある状況が運以外の何者でもないのに、それを振りかざしてはいないだろうか。私は十分に謙虚だろうか。忘れかけていた、帰国した当初の気持ちを、思い出させてくれた映画です。


「パラダイス:希望(Paradise: Hope)」

www.paradise3.jp
ウルリヒ・ザイデル監督のパラダイス三部作の、なぜか三番目から観てしまいました。不思議な後味の残る映画でした。面白かったです!これはコメディで分類してもいいと思います。
ぽっちゃり体系のメラニーがある夏に参加したダイエット合宿。そこで出会った年上の医師(初老)との恋を描いています。
描いていますが、終わった後に、なぜか恋の切なさより、変態の強烈さが残る。メラニーちゃんほんとにすごくかわいいんですけど、印象に残っているのは、医者の変態行為だけです。
ザイデル監督の映画は初見ですが、構成が独特(固定カメラと手持ちカメラの”きちんとした”使い分けとか)なのと、アドリブと思われるシーンが多いせいで、静かながら通奏低音のような鈍いリズムを感じます。
他の作品も見てみないとそれが監督の個性なのか、フィルムの個性なのかはわからないのですが、確かにこれまでに見たことのない映画ではあると思いました。
あと、見た後に、人間ぽっちゃりしててもかわいいんだなって、個人的に痩せ型至上主義だった価値観をすごく反省させられました。メラニーちゃんはじめ、登場する女の子たちがほんとかわいくて。ぎゅってしたいです。彼女のかわいさをあそこまで引き出しただけでも、ザイデル監督すごい。女の子にもぜひ観てほしい映画です。