「6才のボクが大人になるまで(Boyhood)」をみてきました。

リンクレーター監督の最新作!
ギリギリすべりこみってかんじで、劇場にて。


http://6sainoboku.jp/


面白かった!とてもいい映画でした。
例によってリンクレーター節炸裂という感じのだら〜っと続く話ですが、今作にいたって、それが歳月というテーマと撮影手法に見事に調和したという印象です。
この映画は、実際に一人の少年が6歳から18歳になるまでの12年間で撮影されており、主演のエラー・コルトレーンが実際に成長していく中で、その時間を共有しながら製作されています。


とても不思議な感覚の残る映画です。
映画の中で、時間が短縮されることなどいくらでもあることですし、20年や30年があっというまに経過することも(場合によっては何百年も!)よくある話です。この映画も、やはり12年という歳月を2時間半という時間の中に押し込めています。
ところが、映画を観終えたあと、実際に、私も登場人物たちと一緒に12年の歳月を過ごしたような気がしました。「12年経ったんだなぁ」と思ってしまいました。こんなこと、ふつうに映画を観ているだけではめったにないことです。というか、初めて。
よく、登場人物が映画の中でその人生を生きる、と言います。役者は、映画の中で別の人生を生きる、と。今作に出演する役者は、実際にもう一つの生を、映画を撮影することで生きたと言ってもいいかもしれません。決して短縮された時間、虚構の中にすっとばされた時間ではなく、彼らが生きた時間と同じ、空白も短縮もない長さで、しかも同時に。
撮影されなかった時間、通常は余白の中に沈んで行方不明になってしまう時間が、この映画においては、スクリーンの外にも確かにあったものとして蓄積され、それが登場人物たちの、役者の変化として現れてきます。成長し、年老い、やせたり、太ったり、結婚したり、別れたり、を演じている彼ら自身が、彼ら自身にはどうしようもない変化を引き受けた上で、登場してくる。
今後彼らが同じ役を演じることはもう二度とできず、ですからこの映画は、まさに奇跡と呼ぶのにふさわしい、瞬間の積み重ねの上に成り立っていると言ってもいいかもしれません。


映画会社、出演者、製作者、全員が12年という年月をなんとか共有しながら、完成に至ったというのも、映画がいかに多くの協力者から成っているかを考えると、ほんとに奇跡。
途中で監督が死んでしまうことだって、もしかしたらあったかもしれない。


そういう理屈ぬきに、とにかく物語もよかったし、観終えた後の気持ちがとてもよかった。いま、このときに、劇場で公開されているときに、私が生きているうちに、この映画を観られてよかったなぁというのをなんだか感慨深く感じてしまいましたし、そういう意味では、劇場へ映画を見に行く、そういう行為を肯定してくれる映画でもあったのかなと。家でもたくさん映画を観ますけど、映画がこんなふうに、劇場で見るものっていうのも私たちが最後の世代かもしれないとか思うと、もうちょっと劇場へ足を運んだほうがいいのかなとか考えてしまいました。


ほんとにいい映画なので、とりあえず観に行ってほしい。ひとりでも、家族でも、カップルでも、友達同士でも、みんなで楽しめると思います。超おすすめ!