「バーニー/みんなが愛した殺人者(Bernie)」「天才マックスの世界(Rushmore)」

最近ハズレが続いていたので、何か当たりそうなものをと。


リンクレーター監督の映画がみたいということになり。面白かったです!英語では「black comedy」として紹介されている今作、確かに殺人事件を扱うあたりはブラックかもしれないのですが、それを補ってあまりあるほんわかした後味の映画です。
実際にテキサスのカーセージという町で起こった殺人事件を基にした映画で、39歳の葬儀店員が81歳の老婆を殺し罪に問われるという話。ただし、殺すほうは町でも有名な人気者、殺されたほうは嫌われ者のおばあさんという筋。
おなじくリンクレーターが監督している『ニュートンボーイズ』と似た感じの話で、犯罪者を主人公にして経緯から裁判まで描き、エンディングでその後のオチをちょこっと説明するという流れなのですが、コメディにしながらセンスよくまとめてくるところはさすがというか。殺人が題材なので、やろうと思えばサスペンスとか、感動モノにもできたと思うんです。
何が起こっているのかわからない状況から、次第に内容が判明して、オチに向かって静かに流れていくというのはリンクレーターの手法なのですが、これがポール・トーマス・アンダーソンだと激流になってしまうのに対し、リンクレーターは非常に静かな川面のままで、そこが私は好きです。また、ポール・トーマス・アンダーソンの場合はオチが感情のカタルシスになるのに対して、リンクレーターはストーリーとしての落としどころを用意しており、広がっていたものがきちんと一点に収まっていく気持ちよさがあります。私は両監督ともすきなんですが、それぞれ、自分の得意なことを自分にとっていい見せ方で見せられる監督だなぁと感じています。
というわけで、単純に楽しめる映画ですし、時間も90分ほどと短いので、気軽にみるのにおススメ。


天才マックスの世界 [DVD]

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ウェス・アンダーソン監督の初期作品。面白かったです!
多方面に才能を見せる少年マックスは、名門校に通うも授業がおろそかになってテストで落第。初等科の教師に恋心を抱くも放校されるわ振られるわ友人の裏切りにあうわのさんざんな目に。それでも立ち直って最後は自分が脚本する舞台を成功させるといったかんじの筋です。
ひねくれた主人公が日常を取り戻す話をウェス・アンダーソンが描くとどことなくノスタルジックなコメディになるのが面白いですよね。青年期に誰もが遭遇する、理想と現実とのギャップ、挫折、傷つく心、そこからの復活と、新しい理想の成就。たとえすこし違う形であっても、理想にたどり着くことはできるというメッセージは、希望があってとてもいいなと思いました。リンクレーターよりも作りこまれた構図や小道具の設定なども、好みはあると思いますが、よかったと思います。
たとえ思い描いた方法じゃなくても、最初に目指した場所じゃなくても、自分の理想には到達できるというのは、ルサンチマンとはまったく異なる、立派な達成じゃないかなと思いますし、主人公にそうしたメッセージを背負わせて重くならない描き方ができるのは、ウェス・アンダーソン監督の才能だなぁと感じました。家族みんなで見られるいい映画だと思います。