「オンリーゴッド(only god forgives)」を観ました。

「ドライヴ」の続編的な映画だというので、これは!と。

オンリー・ゴッド スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

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困惑する映画でした。好きか嫌いかで言えば、好きと言えなくもないけど素直に好きとは言いにくい、なんとも言えないかんじ。いい映画かといわれたら、いい映画かもしれないけど、万人にはおススメできないです。レフン監督は何を撮りたかったのか。
一言で言うと、みみっちいブローカーをタイ警察がやっつける話。なんですけど、そこはレフンとゴズリングなんで、もういいんじゃないかっていうくらいの伸びた間合いで音楽と映像がゆっくり流れていく。説明はなく、だんだん登場人物が死んでいって、最終的にゴズリングと始末人の対決になる。
ゴズリングは無口で翻弄されており、今回は全然活躍しないし、かっこいいかどうかでいうとかっこよくはないです。今回むしろ活躍していたのは刀を手に悪人をばっさばっさと殺していく謎の始末人ですし、かといって、その人が主役かって言うとストーリーは微妙にゴズリングを中心に展開していきます。
さらに困惑するのは、幻視と現実の狭間がかなりややこしく、それはたとえば「ザ・マスター」的な、完全に現実と混ざり合った中に登場する奇妙さなのかっていうとそういうわけではなく、観ていて幻視とか夢だろうとわかる程度には差がある。にもかかわらず、ストーリーがほとんどないので、幻視自体の意味づけが私たちの中で奇妙にねじれてしまう感覚があります。幻視が単なる非現実ではなく、ある種の予兆とか予言のように見えてくる。実際に映像の構造としては最終的に意味のある幻視だったということもわかるのですが。
それ以上に、唐突に差し込まれるカラオケシーンとかもうわからなすぎて笑えさえしなかったし、無表情で見ている観客とか、主人公以外の存在の扱いがひどいっていう。それはたとえば、「お嬢さん方、目を閉じて、今から起こることはすべて忘れなさい」と始末人が言う場面に代表されるように、その場面にコミットできない存在として扱われていることからもわかる。レフン監督はあんまりたくさんの登場人物を扱えない人なのかもしれないのですが、それにしても、この群集の扱いはまるで現実それ自体が悪夢のような印象を受けます。夢の中では、群集はほとんどぼやけていて、意味のある存在は私と、あなたくらいです。
というわけで、なんとも歯切れの悪い後味の映画ですが、別に映画自体が後味悪いわけではないんですよ、不思議なんだけど。難解な映画ではないです。
まだこのよくわからなさを説明するにはいたっていないのですが、そのためにもう一回観る気はしない…。レフン監督のほかの作品が好きな人には、見て感想を教えてほしいです…。