「マグノリア」をみました。

縁は異なもの味なものというわけで、上映当時映画館で見て以来。

面白かったです。やっぱりポール・トーマス・アンダーソン最高!
偶然、運命、あるいは信じることについて。映画を小説のように撮れるのはこの監督ならではないかと思いました。

天才少年の哀愁については覚えていたのですが、今回見直して、トム・クルーズ演じるTJマッキーのことをすっかり忘れていたことには自分ながら驚きました。あれだけアクの強いキャラクターを忘れていたなんて、なんか抑圧していたとしか思えない。

見直して気づいたのですが、構成は凝ってるものの、ストーリーはシンプルで、理解しやすいものだということにも驚きました。

ある物事に気づくかどうか、あるいは覚えているかどうかで、私たちはある程度、関係性を認識しますが、この映画の中では、あらゆることが何らかの関係を主張してきます。人によって、これを運命と感じたり、偶然のイタズラと感じたり、あるいは関係に気づきさえしないかもしれません。
ビフォア・ミッドナイト』の中で、イーサン・ホークが次回作について語る場面があるのですが、そこで、「記憶力がよくてあらゆることをすべて覚えているがゆえに、街が狭くてしかたなく感じる主婦」みたいなキャラクターが出てきます。私たちが事実と呼ぶものと、それらの関係性とはなんなのか、誰かが気づくことによって編まれる物語でしかないのではないか、みたいなことを映画を観ながら感じさせられましたし、そういう、読み手や鑑賞者の記憶に依存して物語の形が決まっていく仕掛けそのものは、非常に小説的であると思いました。

実はこの映画、スケール自体はすごく小さい。広大に感じる演出が最初されていて、それが終わる頃には実は一つの街のあるエリアに絞られていくんだということに気づいていきます。徐々に全体像が明らかになっていく、と言葉で書くと簡単なようですが、それを実際に映像として気持ちよく見せられるかどうかって難しいんじゃないかなと。ポール・トーマス・アンダーソン監督の才能って言うしかないかもしれないですね。


彼のほかの映画に比べて、映画全体がとてもやさしいのもよかったです。キャラクターに対する視線は温かい監督だと思いますが。とはいえ、カエルの場面は全体的にグロテスクですし、カエル苦手な人とか、べちゃべちゃどろどろしたものが苦手な人は絶対見られない映画だなーとは思います。

ひとりで見ても面白い映画だと思いますけど、友達と見て、感想言い合うっていうのも楽しいかもしれないです。ただし、カエルが大丈夫な人に限ります。