『アメリカンハッスル』〜限りなく黒に近いグレー〜


男には、やらねばならぬときがある。女にも、欺く男が必要だ。
というわけで、アメリカンな詐欺師の物語を2時間ちょっとかけてみました。


クリスチャン・ベールってこんな役もできるんだという一作。卒なくおもしろかったです。ハゲで肥満体なのに妙にセクシーでクールな男って、すごくベタなんだけど、このベタな役をしっかり演じられる役者さんということでクリスチャン・ベールは適役でした。
また相手役のエイミー・アダムスは、『ザ・マスター』以来でしたが、彼女の不思議な魅力がよく引き出された役作りでとてもかわいかった。


詐欺師もの、って誰がいつ、どこでどうだましているのかを想像しながら見るのが面白く、そういう意味では恋愛感情という一番難しいところを詐欺に絡めたところがこの映画の一番の見所と言えるかもしれません。というか、基本的に恋愛って、だましだまされなんだよなぁ、というようなことを思い出し感慨深くもありました。


だましだまされという話でいうと、私たちは見たいものを見、信じたいものを信じる生き物なので、結局普段から彼らとたいして違わないことをやっているだけなのではないかという気もしてきます。つまり何らかの仕方で担保をしていると思っていますが、それが担保でありうるかどうかは、実のところ定かではないからです。どの幻想に加担し、どの仮面をつけるのか、私たちは堅実な生き方をしているようでいて、けっこう危うい日々を送っているのかもしれません。


長いですが、退屈な映画ではないので、レンタル屋さんで見かけたら手にとってみては。