「キャビン(cabin in the woods)」と「シン・シティ」をみました。

いろいろみたかったやつが見られなかったり、新作を全然観にいけなかったりで、鬱憤がたまってこういうセレクト。


例によってアメコミ映画ですが、アラン・ムーアが左の雄ならば、フランク・ミラーは極めつけの右ということで。結局際までいくとどっちもそんな変わんないんじゃないかと思ったりもしますが。
犯罪が横行する街で、さまざまな主人公たちが独自の正義=美学によって敵(と目される相手)をめった殺しにする話です。
すごく面白かったんですけど、映画を観たっていうか、アニメーションを見たっていうか、漫画が動いているのを観たっていうか。構成がはっきりとしていて、見せたい映像の美が極限まで削ってある。絵の完成度は非常に高い映画。シンプルなんだけど、すごく美しい構図でした。ストーリーは非常にマッチョで、男かくあるべき、女かくあるべき、といわれ続けているようでつらかったですけど。「かっこいいとはこういうことさ」的テイストが好きな人はとっても楽しめる映画です。あと、美しい構図や、強い男、美しい女、美しいケツやおっぱいなどが好きな人も楽しめると思います。


キャビン [DVD]

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ホラーかと思ったら、サスペンスジャンルにあった。面白かったです!ふつうにエンターテイメントでした。
5人の友達同士が山奥の別荘に遊びに行ったらなにやら不気味な雰囲気が漂っていて…というあたりからお決まりのホラー展開なのですが、この映画が面白いのはそこにメタな装置があらかじめ組み込まれているところ。ホラー展開がなぜ起こっているのかと思ったら、実は地下にすごーい組織が隠れていてね、という話。まああとは実際見てください。
セリーヌとジュリーは船でゆく」というジャック・リヴェット監督の映画がありますが、あれと同じ構造です。読まれている対象が読んでいる側へ干渉する。要するに、本の中のキャラクターだと思っていたのに、そいつらが本から飛び出して自分を攻撃してきた、みたいな展開です。
ある構造の中に押し込められた対象について、私たちは彼らそれぞれの自我や自意識についてはまったく考えません。それらは実験の対象であったり、観察の対象であったり、操作の対象であったりします。ところが彼らにも自由意志(free will)があり、たとえ「そのように作られた」世界であっても、彼らの意思そのものは自由で、彼らの行動そのものは彼ら自身の決定によるのです。というわけで、そこに「想定外」の行動が入ってきてしまったおかげで観察する側の世界も破壊されて、結局世界そのものが破滅にいたるわけですが、何か、そこには楽観的な清清しささえ感じられます。たとえ行き着くところが同じ死であったとしても、強制された死ではなく、自ら選び取った死であるということ。人間という不自由な生き物の尊厳は、そんなささいなこと、そんな単純なことでありながら、自意識にとってはこれ以上ないほど重要なことによって守られている、そういうことを思い出す映画でした。
何も考えずに見られますし、楽しめるので、おススメです!