「Bug」と「ノーカントリー」をみました。

レンタル屋のただ券を消費しようとして、まんまともう一本おまけに借りてきたの図。ただより怖いものはナシ……。


BUG/バグ [DVD]

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アメリカ映画としては珍しい(?)セカイ系でした。面白かったです!
出演者が4人くらいしか出てこず、舞台はほぼモーテルの一室のみという低予算かつ動きの少ない映画ですが、スリリングな心理劇に仕上がっていました。
ある女の家に住みついた男が突然「虫がいる」と言い出し、最初は疑っていた女にもその虫が見えるようになる、という筋。映画の解説でフリードキンは「善と悪の間」のような領域を描きたかったと言っていますが、確かに、彼の映画は常に常識の線を揺さぶってきます。映画を観ながら「どうせ男の妄想だろ」と考えるわけですが、ときどき、「いやもしかしたら本当に見えているのかもしれない」と思ってしまう。「見える」ということがこれほどあいまいなものであり、存在がこれほど「見える」ことに左右されるものなのだ、ということに改めて戦慄します。
精神医学上は、名のある症状ですが、彼らの見ている世界は主観的なセカイそのものです。私たちは画面のこちらがわにいながら、そして他人でありながら、その世界の有様に思いをはせることになる。私たちは決して同じ世界を共有しているのではなく、むしろ全員異なる世界に住んでいるのかもしれない、そして決して相容れない世界の間で、かろうじてつながりを持ち続けているだけなのかもしれない、と、そんなことを思い出す映画でした。


老いた保安官が出会う最後の事件。よい映画だなとは思ったのですが、個人的には好みではない感じでした。スタイリッシュな映画が苦手なのです。
よかったところというか、終始不気味なテンションを保っていたのが殺し屋です。彼がいったいどうしてそういう人になったのか全然わからないですし、麻薬の取引や大金といった生々しい現実とは異なる価値観で人を殺していくので、どこか、地に足が着かない印象が残ります。生身感がない。あまりにさらっとしているので、老保安官のしんどさのようなものも、どこにその根があるのか、イマイチすかっとわからない。どこか荒涼とした、のどの渇きのようなものは感じ取れるのですが、殺し屋の存在感が異次元すぎて、なんらかのファンタジーなんじゃないかとも思えてきます。こういう不思議な感じを覚える映画といえばウェス・アンダーソンダージリン急行とかですが、画面の作り方や展開は、なんかそちらにとても似ているナーと思いました。私の感性もそろそろ老いてきているんでしょうか。映画自体はとてもよかったんじゃないかと思います。