天国の口、終りの楽園。

来週公開の「グラヴィティ」に期待が高まるクアロン監督の旧作を見てみようシリーズ。

天国の口、終りの楽園。 [DVD]

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しょっぱなからテンションの高いファ○クシーンで始まる今作は、とりあえず若いって大変だねーという感じの終始馬鹿な男子高生と人生の終末を迎えようとしている支離滅裂な女性との旅物語で、フ○ックのテンションだけでもっていった感じが否めませんが、面白いことは面白かったです。
映像は相変わらず美しく、メキシコの様々な場所をドライブしながら撮影したようで、風景が非常に面白く、それだけでも観る甲斐があります。
この映画を成立させるのはストーリーというよりは感情であり、感情の中でも特別強い情動、欲望です。とはいえ、欲望というのはご存知の通り、非常に空しい感情のひとつでもあり、行為が終わった後の空虚さたるや、宇宙で存在するのはただ無だけであるというくらいの空しさ。若さと欲動の激しさを描きながら、同時にその裏に潜む空虚さを描いているという点は、個人的にはとても評価できるところでした。
つまり、セックスって楽しいけど悲しいよね、虚しいよね、というところがとてもよく描かれていて、行為に至るまでの興奮や情動の盛り上がりが、一瞬にして終了するあっけなさ、が今まで見た映画の中でも正直に描かれている部類ではなかったかと思います。
私はハリウッド映画のファックシーンがあまり好きでなく、それはつまり綺麗過ぎたりコミカルすぎたりするからで、恥ずかしさとか、独特のやるせなさみたいなもの、ああこれからやらないといけないのかという面倒くささみたいなものがいっさいないからです。服を脱いだり靴下を脱いだり、ベッドから落ちそうになったり靴がじゃまでジーンズが脱げないとか車が狭すぎてうまく動けないとか、そういうところが真面目に撮れていて、笑っちゃうんだけどこんなもんだよなあ、というところが、今作はよかったですね。
オット氏は、物語のキーが途中で入れ替わってしまっているのが気になったようですが、私はその点は気になりませんでしたし、むしろ腑に落ちるところさえありました。このあたりは、見る人によっては納得いかないかもしれません。
若さあふれる下手くそなファックと、美しいメキシコの風景が見たいひとにはおすすめの映画です。