夢の中を歩く。

最近、色々な方に文を褒められることが増え、「いやいや私なんぞの駄文にもったいない」という気持ちもありつつ、やっぱり素直に嬉しいのが本音。なので調子に乗ってしばらく書いていなかった日記的なものを書いてみようかと思います。


よく見る夢のひとつに、ある街を舞台にしたものがあります。


たぶん少し先の未来で、街は人がいなくて、荒廃しており、空はいつも曇って薄暗く、モノレールは壊れて止まっていて、地下シェルターには吸血鬼やゾンビがうごめいています。
曇り空を背景にしたモノレールの高架線路というイメージは、たぶん私が大阪にいたころに醸成されたものだとは思うのですが、この街は私が夢を見るたびに少しずつ大きくなっているようです。
山では脱走した実験体狩りが行われ、廃墟となった城の一室では呪文の解読が試みられています。アパートの外では殺人が起こり、私はその街でいつも何かから逃げています。人々はみな不幸せな目をして、ゆっくりとしか動きません。


昨日、久しぶりにその街の夢を見ました。でも、街の様子は一切でてきません。ただ、私はまたあの街にもどってきたと感じただけです。
その街で、私は恋人と暮らしていました。部屋を綺麗にするのが好きな私は、そこに大好きな恋人とふたりで暮らしています。でも、すぐに実は恋人に妻がいたことがわかり、その妻がアパートへやってきて、私に出ていけと言うのです。私は絶望しました。でも、恋人は妻の肩を持つので、私は仕方なくそのアパートの奥にある、日の当たらない小さな部屋に引っ越します。恋人はときどき私の部屋へ来てくれますが、すぐに帰ってしまいます。大好きだったアパートの部屋は恋人とその妻によってどんどん薄汚れて、暗くみじめになっていきます。私はいつ恋人が来てもいいように、自分の小さな部屋を一生懸命綺麗にし、窓も拭いてわずかな光が部屋中を照らすようにと願います。
そのうち、私の心が不意に明るくなります。私には、別の恋人ができたのでした。新しい恋人は小さな部屋に文句も言わず、私と楽しくおしゃべりをしてくれました。私は、過去がすでに遠く、未来が小さく明るい窓となって自分を照らしているのを感じます。


夢そのものに意味はなく、物語もありません。ですから、私自身がこの夢をこのように物語にしたということなんでしょう。あの街は私にとって恐怖や不安の象徴ですが、ときおり、こうして希望を与えてくれもするようです。夢の中にある街がある種の構造を持つというのは、なかなか面白いではありませんか。