いい歌を聴いたというより、いい声を聴いた。


まぁ表題の通りなんですけど。
昨日横尾美穂さんという方のライブに行ってきましたという話を長々書きます。
http://mihoyokoomusic.jimdo.com/


歌われているのを聴くのが初めてってわけでもなく、お話もしたことのある方なんだけど、改めて「いい声してるな〜」と思ったライブだった。


私は彼女ほど、その才能を「賜物(gift)」と呼びたい人を知らない。


声って残酷な楽器だと私は思っていて、つまりダイレクトにその人のありのままが出てしまう。
ためらいや、悲しみや、蔑みや冷たさのようなあまりよくない気持ちも、嬉しいとか楽しい、気持ちがいいっていう高揚感も、声を聞けばだいたいわかる。


美穂さんの歌声は、とにかく気持ちがいい。耳から心臓までまっすぐに届く。まるで光のように一瞬で心を掴まれる声って、私はそうそう聴いたことがなかったので、最初はとても驚いた。


確かに、技巧的にうまい人はたくさんいるし、耳あたりのいい声の人もいる。かわいらしかったり、かっこよかったり、声そのものにキャラクターのある人もいる。


でも、彼女の声はそのどれとも違う、矢のようにまっすぐな声。まるで内臓がひっくりかえって口から外に飛び出してきてるんじゃないかっていうくらいに、飾り気のない、太い声。それでいて、情感豊かで、あるときはさびしく海岸を歩いているような、あるときは空に向かって叫んでいるような、風景を想像してしまう。


ここからは想像だけど、私はそのまっすぐさが彼女自身であるような気がする。だからいつも、彼女の歌声を聴くとほんとに元気になる。シャワーのように、美穂さんの声を浴びると全身にこびりついたいやな汚れが綺麗に洗い流されていくように感じる。ああそうか、私はこういう形をしていたんだなあと、ふと我にかえる。


私はジャニス・ジョップリンを聴いたときも、マリア・カラスを聴いたときも、へたくそな歌だなあと思ったし、別に感動はしなかった。ただ、彼女たちの声に圧倒されて、その前にひれ伏した。でも、美穂さんの声は、私を奮い立たせ、前を向かせてくれる。日々の圧倒的なボリュームと、それを生き続けることの奇跡を思い出させてくれる。


私はクリスチャンではないし、神を信じてもいないけど、神が彼女を作ったんだとしたら、そして彼女に歌声という賜物を授けたんだとしたら、「やるじゃん」と言ってあげたい。なんなら少し信じてあげてもいい。


それくらい、横尾美穂という人の歌は、そして声は魅力的なんですよ。
ぜひ機会を見つけて、一度聴きにいってほしい歌手です。