対照的な二人のガンマン

非常に対照的な映画だったと感じたのでメモしときます。

タランティーノがちゃんと映画を撮ったよ!こと復讐三部作になる予定らしいシリーズの2作目。
おもしろかったです。主人公の特別感がとても上手に描かれた作品でした。主人公は運が強く、頭脳明晰容姿端麗運動能力も非常に高く、銃撃戦のさなかにあっても一発も被弾しないし、どんなショットも見事に命中させるし、危機は機転で切り抜けるし、執念深く復讐は達成し、ヒロインとは結ばれる。あの無敵ぶりは由緒正しい主人公にしかできない所業です。
随所に差し込まれる昔の海外ドラマのようなカメラの動きもおもしろかったです。あとは、かぶってるマスクが見えるかどうかで仲間割れするシーンのような、それ今入れなくてもよかったよねというシーンがあったのがよかった。ああいう箸休めのような一こまは、人がいっぱい死ぬ映画では必要かもしれない。
設定がありえないものなので、完全なるフィクションものとして見られたのもよかったです。
あ、それともう一つ、前回のブラット・ピットに続き、今回はディカプリオさんが悪いアメリカ人の役なのですが、男前が悪役やるっていいなーと思いました。憎たらしいくらい悪い。いいところがひとつもないので、心置きなく撃てるという設定が非常にぐっと来ました。シンプルなものに飢えているのかもしれません。
血のりとタランティーノが苦手じゃない人は楽しめると思います。


こちらも主人公は主人公然としているのですが、まったくもって、主人公に正義があるとは思えないところが前述の『ジャンゴ』とは対照的でした。
そもそも主人公は山賊で、冒頭からさくっと人を殺しており、なぜか県令になりすまして悪い地主をやっつけようとするあたりは義賊なのかと思わせるのですが、その割にはすぐに相手を殺さず被害を拡大してしまっていたりと、私怨にとらわれているようなところもあります。
また出てくる人物もみなどこかしら嘘を吐いていて、いったい何が真実なのかがわからないまま、人だけが死んでいくという、これだけかくとなんだか恐ろしい映画のようですが、観ている間はわりとコミカルなつくりもあって、テンポよく観られます。
秀逸なのは、最終的に民衆を蜂起させ、地主を追い詰めるところまでいきながら、そこに生まれるのがカオスでしかないというラスト。自分がやったこととはいったいなんだったのか、復讐なのか、自己満足なのか、義憤だったのか、いずれともわからない。あれだけ復讐だと言って一致団結してきた仲間たちまで自分勝手にどこかへ行ってしまって、彼は一人馬に乗り、列車の後ろをとぼとぼとついていく。
人の心の変わり易さ、素直さの裏返しが卑怯さになっているような、裏表のくるくる変わる人の言動を主人公がじっと見ているようで、かといって主人公自身の正義がどこにあるかはよくわからないまま。冷静なようでいて、どこか哀れんでいるような、おもしろがっているような、監督の視線がおもしろい映画でした。