ティム・バートン版バットマンをみました。

ノーラン版バットマンとの違いを知りたくて。こうなるともはやただのマニアです。

バットマン [DVD]

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突っ込みどころがないわけではないのですが、ともあれ、ジャック・ニコルソンのジョーカーが本当にすばらしかったです。くどいし、きもいし、不気味だし、あたまおかしいし、悲しい。
悪役としてこれ以上ないほど完璧なできでした。というわけでこの映画はほとんどジョーカーという役どころが主になっているので、バットマン自身の成立やバットマンの正体がどうかというあたりはあまりミステリーにはなっていません。そもそもアルフレッドがヒロインを隠れ家に連れてきちゃうわけだし。
ルフレッドやブルース・ウェインという役どころの背景についてもほのめかされてはいるのですが、詳細は描かれないまま話は進んでいきます。ノーラン版にもこのあたりの潔さが10パーセントほどほしかったところです。


この映画におけるジョーカーというのは、『オペラ座の怪人』の怪人であり、また『V for Vendetta』におけるVである、つまり異形の存在であり、叶わぬ恋の主人公でもあります。彼はキレた存在でありながら、なおかつその愛情にすがっており、そこに一縷の希望を見出そうとしているように見える。だからこそ、ヒロインの裏切りは死にも値するのでありますし、一方でその後の彼の破滅は、単純に善の勝利では片付けられない、善良な心の敗北でもある。


ノーラン版バットマンがブルースの葛藤を描き、同時にゴッサムシティという町にはびこる悪を描いていたとするなら、ティムバートン版のバットマンはむしろもっと矮小になりうる要素で話を展開していこうとします。
それがどうにか大義名分の善悪にとどまっていられるのはなぜかと考えてみたのですが、結局自分自身の利害とはまったく関係のない殺人(大量殺戮)を犯すというところなのではないかと感じてます。その大量殺戮をめぐって、ジョーカーとバットマンは線を引かれるだけに過ぎないというか。


それと一番問題だというか、これは悪いバットマンだなーと思ったのは、バットマンが人を殺すところですね。
ノーラン版ではジョーカーを殺さず生け捕りにするわけですけども、ティムバートンは完全に殺しています。殺さずの精神はどこへ…。おかげで話はスッキリ終わるんですけども。


全体としてとても楽しめましたが、ノーラン版バットマンとはまったく異なる、かなり人間くさい映画に仕上がっていました。面白かったです。