ダーク・ナイトふたたび

ダークナイトは公開当初に見ており、大変がっかりした記憶があるのですが、昨日のビギンズの余勢を駆って見てみました。

ダークナイト 特別版 [DVD]

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前作を見たことで当初なぞの展開としか映らなかったところも完全に理解できたのはよかったです。
ただそれで映画が良くなるわけではなく、やはりどこに焦点があるのかよくわからない展開だったな…というのが正直なところ。


だいたい、「あっしまった!あっちを監視しておくの忘れてた!」的展開が多すぎやしませんか。
お前ら稀代の悪党を扱ってるんだからもう少し用心しろと。
警官のうっかりミスでシリアスな展開が起きるので、実際の裏切りもあんまりひどいことに思えない。(どれが一番ひどいの?って言われたらクライマックスで子供に銃を突きつけるシーンが一番ひどいんじゃないかと思います。)


レイチェルの描き方もまずいなぁという気がふつふつとしていて、なんかあれじゃあレイチェルがすべての元凶みたいじゃないかと。お前がハッキリしとかないから検事は闇の世界へ行ってしまったではないかと。むしろそれだけで闇に落ちる検事の正義感ってどれほどのものだったのかと。
(というところでああなんだこの感じ確か以前にも…と思って思い出してみたのがスターウォーズの地獄の業火に焼かれるアナキン・スカイウォーカーのエピソードにそっくり。)


そもそも「Why so serious?」をコピーに選んでおいて、悪党がジョーカーだけじゃないというのが軸がぶれる原因だったんじゃないのかと言う気もします。
悪党が悪党を生む。なるほど確かに。
でも今回のやりかたではジョーカーも尻すぼみになるし、トゥーフェイス氏に至ってはなんか惚れた弱みに付け込まれた小悪党になっちゃって、すごく残念な人だね…という印象しか残らない。いや、現実に悪党というのはなにか残念な人なのかもしれませんが、結局二人の悪党を並べることで「ジョーカーの狂気」が「トゥーフェイスの復讐」に中和されてしまった気がします。
狂気というのは理由がないから狂気なのであって、理由のある復讐とは相容れないテーマです。それゆえ復讐を狂気にかぶせてしまうと理由のない狂気であったところの狂気そのものが、儚く消え去ってしまう。狂気というのはそれほど繊細なものです。


そうそう、つまり私はジョーカー=ヒース・レジャーの狂気が見たかったわけで、そもそもバットマン自体は本当にどうでもよかったんです。今回のような、こう精神的に「俺の負けだ…」というんじゃなく、ジョーカーの狂気にこてんぱんにのされるバットマンが見たかった。のされ方が足りない。それでめっためたになったところに、次回作でトゥーフェイス登場というほうが、個人的にはすっきりした話になったんじゃないのかなぁと。



前の感想よりは少し建設的になったような。