V for Vendetta
アラン・ムーアつながりで本日は「V for Vendetta(Vはヴェンデッタ[血の復讐]のV)」を。
【数量限定生産】Vフォー・ヴェンデッタ ブルーレイ版スチールブック仕様 [Blu-ray]
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ダークヒーローという意味では、これもまたアベンジャーズとはかなりノリの違う映画です。
(そもそもVがヒーローなのかというのも疑問ですし…)
また原作とはかなり違うようなのですが、私は面白く見ました。
特に中盤のヒロイン丸刈りシーンなどはとてもよくできていたと思います。
ただ、どことなくふわふわした印象のまま最後までいってしまったような気がして、なぜなのかなと考えてみると、物語世界の成立した根拠、背景設定が薄弱なのではないかと思い至りました。
原作では核戦争後の荒廃した世界の中で、なぜかイギリスだけが生き残り、そのイギリス自体もどうしようもない状態になっていたところに全体主義国家が成立し支配を強めるという設定だったようです。
映画ではこの説明がほぼないまま、全体主義的世界観だけがひたすら描かれていくので、なぜ<こういう世界>になったのかがよくわからない。よくわからないので、迫真のドラマが展開されても「はぁ」という感じで流れてしまい、いまいち納得感がありません。
(全面核戦争というのが差し迫ったものと思えない現代では、核戦争があって世界が荒廃しましたという設定がいまいち響かないのは理解できるのですが、では何を設定すべきかと言われると、私もよくわかりません。こうなってくるといよいよ宇宙人を登場させるしかないのかというところでやはりアベンジャーズなのかなーみたいなキモチに)
とはいえ、前述のヒロイン丸刈りシーンに始まるナタリー・ポートマンさんの拷問シーンから雨のシーンまでの流れはよくできており、彼女の強い変化が物語によって喚起されるという、Vの「理念(ideas)」の勝利を示唆する展開となっていました。
また、Vという人物が、現実の肉体を持ちながら完全に実体を持たない存在であるというのもとても興味深かったです。つまり彼には過去がなく、未来もあるのか疑わしく、存在しているものといえば、自らをそのように生んだ人々への憎悪のみです。それゆえVとは「Vendetta(血の復讐)」のVなのであり、彼の生はすべて復讐に捧げられています(というかむしろ、憎悪によって産み落とされ、復讐が彼を育てたという表現の方が正しいかもしれません)。復讐を実行に移すという生ぬるいものではなく、復讐そのものであるというところが、彼が正しく「理念(ideas)」の人である証拠です。
原作からの仕掛け、引用や強調というのはとても面白く、これはやはり原作を読まなければならないなと感じる映画でもありました。
というわけで、明日あたりから読んでみようと思います。
V for Vendetta New (New Edition TPB)
- 作者: Alan Moore,David Lloyd
- 出版社/メーカー: Vertigo
- 発売日: 2008/10/24
- メディア: ペーパーバック
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