一日目(6/3)Heidelberg→Ronchamp→Dijon

この日のメインイベントは、ロンシャンの礼拝堂へ行くこと。私はこれが果たせたら帰ってもいいくらいに考えていたので、絶対に外せない。
交通事情については色々あったので、後ほどまとめて書くことにして、最初にロンシャンの礼拝堂の印象から。


一言で言うと、(ため息)、だ。言葉が出ない。迫力があるとか圧倒されるというより、有無を言わせない、静かな佇まいだった。外側や内側をぐるぐる回りながら(見る角度でずいぶん印象が変わる)、二時間ほど滞在。その間に少し日が差してきて、内部では光の入り方がずいぶん変わった。


あれだけのボリュームがありながら、軽やかな印象さえ与えるのはなぜだろうと思っていたのだが、おそらく、ボリュームとボリュームの間を、うっすらと細いスリットが横切っているからだろう。
それから実際に中に入り座っていると、教会にいるのと同じ、静かな気持ちになってくる。空間の作り方が、長年蓄積された教会建築のそれに連なっているのだ、と気づいた。近代建築でありながら、多くをそれまでの建築から受け継いでいる。コルビュジェモダニズムに連なる建築家ではあるのだが、この礼拝堂では、むしろそれ以前の空間へ戻った、という印象を受ける。小さな窓、少ない光、内部に生まれた大きな空間。様式こそモダンだが、空間の有様は、非常に、正当な教会建築ではないか、と。


ロンシャンの礼拝堂は、観光地だし、写真も大量に出回っているし、辿りつくのがなかなか大変なのだが、それでも、自分で訪れてみる意味はあった。ドイツに住み、多少は教会を見てきたからこそ、今回のような印象を覚えたのだろうとも思う。これまで無視してきた歴史や経験というものの意味を見いだせたという点で、私にとっては、いいタイミングでの訪問になった。


























以下は、ロンシャン周辺の交通事情について、今回の状況を長々と。


ハイデルベルクからはバーゼル経由でまずはベルフォールという、ロンシャン近くの街まで。友人とはここで待ち合わせ。
バーゼル経由を選んだのは、単に乗換が少ないからだったのだが、バーゼルで切符を買う段になってスイスはユーロ圏じゃないことに気づいた。換金で1ユーロほど損する。


特に問題無くBelfort ville駅着。友人が待っていてくれて、待ち合わせも問題無かった。彼女によると、BelfortのTGV駅とローカル線のBelfort ville駅とは、タクシーで15分ほど離れているらしい。帰りはTGVでDijonへ行かねばならないので、さて、どこへ荷物を預けよう、となる。結局、タクシーで礼拝堂へ行き、そこの受付で荷物を預かってもらおうということに。だが、この決定はすぐに後悔を呼ぶことになる。
というのもまず、Belfort ville駅でタクシーがつかまらない。一台来たタクシーも、すぐにどこかへ行ってしまった。電車の時間を調べると、すぐにRonchamp行きの電車がある。予定を変え、そちらを利用する。


20分ほどでRonchamp着。何もない。駅舎さえない、無人の駅。人もいない。噂には聞いていたが、本当に何もなかった。勿論ロッカーなどないので、荷物を抱えたまま市街地へ向かい歩きはじめる。空はどんよりとして、今にも雨が落ちてきそう。


10分ほどで、礼拝堂へ続く道を発見。事前に、ここから30分ほど歩けば礼拝堂へ着けることはわかっていた。だが、なにぶん荷物が重い。近くのホテルに預けられないか友人が調べてくれたが、ホテル自体が休み。他に選択肢はない。荷物を持ったまま、丘へ登り始める。遠くに、微かに礼拝堂の先端が見えた。
登り始めてすぐ、雨がぱらつきはじめる。二人とも、ヒールにサンダル、傘をもち、荷物を抱えた状態で、雨は強くなる一方、まもなくびしょぬれになった。私は今回の旅の目的地がここだからどんな状態でもたどり着ければよいわけだが、友人にしてみると、しょっぱなからこんな状態で山登りをしなくてはならないなんて、とんだ災難だったろう。ここにお詫び申し上げる。ごめんね。


というわけで、休み休み登っているところへ、何台目かの自動車が通りすぎようとやってきた。だが、その車に限っては速度を落とし、私たちのすぐ目の前で止まった。もしや、と思ったら、老夫婦が降りてきて、なんと乗せてくれるという。無計画ですみません…びしょぬれですみません…と思いながら、ありがたく乗せてもらう。あっという間に礼拝堂へ到着した。
どうやらドイツ人夫妻だったらしく、ドイツ語でも少し話しをしたが、私のドイツ語があやしすぎるせいで、英語に。帰りはどうするのか、と聞いてくれたので、帰りはタクシーを呼ぶので大丈夫です、とお礼を言って別れた。


ロンシャンの礼拝堂で扉のないロッカーに荷物を置き、ようやく身軽に。だが雨は降り続き、気温は低い。友人がフロントでタクシーを呼んでくれて(フロントも、タクシーの手配は慣れている様子)、帰りの心配はなくなった。


だが、帰りのタクシーがまた曲者だった。
礼拝堂からBelfortのローカル駅までは30ユーロほど、と聞いていた。そこで、友人が運転手と話すと、今日は50ユーロかかるという。いくらなんでもぼったくりすぎだろう、と思ったが、TGV駅までということなら、まぁ、許せる範囲ということで、乗り込んだ。
だが、着いたところはローカル駅。おかしいじゃないか!と友人が抗議すると、どうやら、休日料金でだいぶレートが上がっていたらしい。時間がないので結局10ユーロほど追加で支払ってTGVまで行ってもらう。メーターの方は75ユーロにもなっていた。
タクシーの窓に貼られていたレートで確認すると、今日はTarif D。どうやら通常の3倍近い料金になるらしい。道理でメーターがぽんぽんあがるわけだ。
というわけで、今後行かれる方はタクシーにはなるべく乗らない方向で検討されるといいと思います。


BelfortからDijonはTGVで小一時間。
日曜ということもあって店はすべて閉まっていたが、小さなマルシェが出ていて、そこで食料を買い込んで、ホテルで夕食。ワインがとてもおいしかった。






教会へ寄ったら、補修工事中だった。こんなふうに、石のアーチを支えながら補修するみたいだ。
ちなみにディジョンマスタードで有名な街なので、お買い物ができるなら、面白いマスタードを色々買いこんでみたかったところ。