愛のむきだし

愛のむきだし [DVD]

愛のむきだし [DVD]

友人からDVDを借りて見ました。とても面白かったです!
以下、ネタバレを気にせず書きますのでお気をつけください。


母の言いつけを守り、たった一人のマリアを探し求めるあまり盗撮を極めてしまう主人公のユウが、ユウに捻じれた愛を感じる新興宗教幹部のコイケの策略によって、これまた父親のせいで男性不審に陥っている女子高生ヨーコと出会う。ユウの家族と教団まで巻き込んだ果たしてこの三人の行く先やいかに、というこれだけ書くと非常にシンプルなお話なのですが、実はめちゃくちゃ長いです。約4時間あります。タイトルが出るまで1時間かかりました。DVDも二枚組、私たちは前半後半を二日間に分けて見ました。


感想ですが、とにかく登場人物がみんなはちきれていて素晴らしかった。渡部篤郎以外全然知らない人ばかりでしたが、どの役を演じた人もみんなはまっていました。


ユウを演じた西島隆弘は、盗撮によって罪を量産する優れて気持ち悪い男を演じており、それはまさしくヨーコが連呼する「変態」に他ならないのですが、これが最終的にかっこよく見えてくるところまで昇華されるのがすごいと思いました。特に、最後にヨーコに向かってサソリとして話しかけるシーンは本当にかっこよかった。泣きました。


一方、ヨーコを演じた満島ひかりの緩急ついた演技もすごかったです。特に、海辺でコリントの手紙を叫ぶシーンが圧巻でした。冷静の中に狂気が、狂気の中に冷静が入り混じる混沌とした少女、少女と女性の間にある引き裂かれるような心のうちが、叫ぶような語りと共にさらけ出されていると感じました。夕暮れの海がすごく綺麗で、この映画の中で一番好きなシーンです。


そしてこのヨーコの無垢さを引き立たせるのが、コイケを演じた安藤サクラのエロスです。とにかく全編ぶっとおしでエロい。女の私でもぐらっとくるエロさで、それなのに寄って来る男は片っ端からめった切りにしていくようなところがヨーコとは違うかっこよさを感じました。彼女の場合は好きな男を見ると自分を傷つけずにはいられなくなってしまうという設定があり、その捻じれまくっている愛情表現、静かに狂っている状態を安藤サクラは余すところなく演じきっていて、この人はすごい女優だと思いました。


ストーリーはボーイミーツガールで、いろいろあったけど二人はめでたく結ばれました、というお話なのですが、4時間の間にテレビドラマを5本くらい見たような気持ちになります。構成が細かく、脇役もしっかり作ってあり、卒なく笑いもとりにくるあたりぬかりないです。
成人指定になっていますが、血しぶきはリアルさよりは演出の過剰さを重視したようなところがあり、それほど気持ち悪くはありません。むしろ、あの非現実感が神とキリストとマリアという背景をうまく盛り上げており、私は違和感なく見られました。
欲を言えば教団の不気味さがもう少し出ると、ヨーコが取り込まれてしまうことに説得力が出たのかなと思いますが、そのぶんコイケが充分不気味だったので、それでいいのかもしれません。というか、コイケが食った。教団を。


園子温の映画は初めて見ましたが、他のも見て見たいなと思う作品でした。おすすめです。でも長いです。