呪われた一週間

まあ、かぜをひいた。それだけだ。二日間寝たきりになっているとどうも、起きあがっても現実味がうすくって、ふらりふらりと世界がかしいでみえる。
ふわふわ。
立ち上がっていても頭の奥の方がうずくかんじがして、膝に力が入らない。少し気が抜けたらかくんとくずおれてしまいそうな。くらい。歩いていても、夢の中のような気持ちで、ふわり、ふわり、としているのだ。
わたしのあたまはまだ、意識という明晰な世界にたどりつけないまま。どこかしらがつるりと別の世界にとおりぬけてしまっていて、こちらへもどってきてくれないのだ。
朦朧(ぼんやり)と、している。
ぼんやりしていたってわたしは仕事にでかけられるし、だれかに向かって笑いかけられるし、あまつさえ、だれかと相談したり、誰かを哀れみさえしたようだ。それでもそれらのできごとはすべて、すべて、夢の中のことのようで、きっとあした目が覚めたら、あした初めて目が覚めたような気持ちで、今日いちにち、あったことを思い返すことだろう。
そしてその想像はおどろくほど甘美であったので、私はいつも、夢の中をたゆたっていたいとおもうのだった。