眠れぬ夜の

ひさびさにまったく眠れない。こういうときは決まって起き出してウェブを無目的にうろうろする。たいていそのまま眠れずに朝を迎えて、新聞屋さんのバイクの音を聞きながら、淡い罪悪感に捕らわれるのだ。いや、焦燥感だろうか。
夜が不安になることなど今年に入ってからはとんとなかったのだが、それも慣れない仕事をして思い切り疲れていたからなのかもしれないとここにきて思う。夢も見ない日々が続いていたのに、五月の終わりくらいから徐々に眠りが浅くなってきた。なぜだろう。
理由を付けることはいくらでもできる。解釈はいくつも可能だ。そして私には適切なこたえを選ぶ自信がない。
ここは暗闇が薄い。いつもぼんやりと明るくて、それでときどき私は行き場を失ってしまうのだ。ふらふらになりながら、目蓋を閉じることもできない。閉じたところで眠りは私を誘いもせずにどこかで油を売っている。その油で私の目を塞いで欲しいのだが。
空間が薄いのだ。夜なのに、どこか寄る辺ない、密度のままだ。重々しい、のしかかってくるような暗闇は今夜はさっぱり姿を見せず、ただ惚けたような灰色の色彩が視界を閉ざしている。ひどく居心地が悪い。隙間だらけだ。
それでもたいてい、明け方の青い色を見れば、自然と眠くなる。不思議と、明るくなってからのほうが、ずっと安心できる。コントラストが重要だ。暗くなりきらない灰色の夜なんて、本当にやりきれない。