少し迷惑な方への迷惑な対峙

ホームのベンチで電車待ってたんですけど、酔っているのか少し態度の大きな中年男性が隣に座ってきたんです。彼はどうやら酔いの所為で全能感に満たされており、大きな音でゲップはするし飲み終えた紙コップは放り投げるし、ひとりごとを大きな声で言うし、あらかた挙動不審な様子でした。私は試験のテキストなど読んでましたし、公共空間でそうした行為をするひとに対して苛立ってしまう性格ですので、どうにか懲らしめてやりたいものだと思ったのですが、とはいえ、面と向かって赤の他人に注意するというのも難しいものです。へたなことを言って余計に絡まれてもかえって迷惑です。なるべく穏便に済ませたい。かといって自分がその場から去るというのもおじさまの思うつぼなのではないか。彼には一度、思い通りにならない人間がいることを思い知らせねばならないのではないか。
そこで、目には目を、挙動不審には挙動不審をとることにしました。おじさまがベンチに座りながらゆらゆら揺れている隣で、こちらもテキストを読みながらぶつぶつ言い、指の爪をぱちんぱちんとはじき続け、ときどき頭をかきむしる動作を五分ばかり続けることにしました。するとおじさまの挙動はぴたりとやみ、電車もこないうちからどこかへ行ってしまいました。やった…!怪しまれた!そそくさといなくなるおじさまの背を見ながら、自分の演技力に体が震えました。
ただ難点は、今回はおじさま以外に人がいなかったからよかったけど、ややもすると自分が不審者として通報されかねないという点で、この点にご了承頂けない方にはこの方法はお勧めできません。