コンビニと商店のあいだ

コンビニのおじさんと仲が良い。とはいっても別に一緒に飲みに行くとかいう仲の良さではない。顔を合わせると一言二言言葉を交わすだけだ。けれどコンビニにあって、こういう会話というのはありそうでない。私はこれまで、何度通ってもまるで初めての客のような顔で接客するのがコンビニだと思っていた。事実、これまではそうであり続けてきたのだ。でも、おじさんは違った。私の顔をみると「これおいしそうやね」「今日はひとりなん」「ようさんたべるなぁ」と何かしら声をかけてくるのだ。最初はへんなおっさんだなぁと思っていたけれど、他の無関心な店員にたったひとりだけそういう人が混ざっているのが面白くなって、おじさんがカウンターに立っているときはおじさんのいるレジに並ぶようになった。
最近おじさんは夜遅くにレジに入ることが多くなってきた。どういう事情があるのかはまったく知らないが、あの年齢で夜中にレジに立つのは決して楽ではないだろう。でも私は夜中にコンビニに行って若いバイト氏が無愛想に打ってくれるレジよりも、おじさんが「おおきに」といって見送ってくれるレジのほうが嬉しい。おじさんは私がスーツで立ち寄るところも、すっぴんで立ち寄るところも、全部知っている。知っていて、「今日はえらいめかしこんでるなぁ」と言う。だから、私は安心して室内着で買い物に行ける。おじさんの前ではうそをつかなくてもいいからだ。おじさんのいるコンビニは、小さい頃に通いたくても通えなかった、個人経営の小さな商店のような感じがして、私はとても好きだ。おじさんには無理のない範囲で働き続けてほしいと思う。