カンフー・ハッスル

いやー、笑いました。笑い殺される。人が死んでるのに笑いを入れてくる。けっこう残酷です。
この映画の良いところは、序列がとてもシンプルなところだと思いました。強い者が勝つ。だから、見ていてとてもわかりやすい。それから、ものすごい才能を秘めたずぶの素人、という設定がぐっときました。小さい頃って、こういうこと考える。私にはきっとものすごい才能が眠っていて、いつかすごい人間になるに違いない。でも、実際はふつうの人間になるのさえ結構たいへんだということを思い知っている私には、主人公の超能力はすかっとするのと同時に、まぶしかったです。
それから、主人公に負けてしまう、狂気の達人が、達人を名乗り、強い者を求めて、つまり自分を殺す人間を求めていると口では言いながら、土壇場で手の平を返して相手を殺そうとするところが面白かった。こう、武道のルールってあるように感じるじゃないですか。たとえば、参ったした相手に追い打ちかけたりしないとか。でも、この映画ではそのポーズが全く無意味に描かれている。許してやる、と言った直後に背中から銃で撃ち殺したり。これはふつう、とても卑怯だと感じます。でも強さ、という点では、確かに狂気の達人は一番強い。彼にとっての強さは、一番最後に生き残るということであり、そのためなら相手を欺いてもかまわない。彼が則っているのは武道のルールではなく、生きるか死ぬかというルールなんです。その意味では、彼はカンフーの達人ではなく、やはり殺し屋であると言えるのかもしれません。で、結局最後に勝つのは、「達人」である主人公である、と。達人はやっぱり強かった、というところでしょうか。