同じ

体のない存在があり、その存在は声だけなのだとする。彼(おそらく低い声なのだ)は、体がないにもかかわらず、彼として同定されるだろう。彼は目に見えず、他の人からは存在するかどうかもわからないのだとしても、私にとっては、あからさまに存在する。存在というのは、その程度のものだ。不在の騎士は、意志の力だけで存在し続ける。私の彼も、声だけで存在し続ける。もし彼の「不在」が言われるのだとすれば、それは他者と私の落差によって。他者にとってなく、私にとってあるということが、彼の存在を不確かにする。もし世界に私しかいなかったら、彼は立派に存在するだろう。