春なのかなぁ

匂いは、時々鮮明な情景を引きずってくる。H&deMが執拗に、匂いと記憶について述べていたのを思い出す。たとえばそれは、体育館の乾燥した、古い倉庫のかびくさい、雪解けする川の泥臭い、雨の日のむせかえるようなアスファルト
初春の、湿った冷たい空気が、排気ガスの匂いと混じって私を、三年前の冬へと連れ去った。だから?何も。ただ私はその頃と今との確実な数年、その距離の遠さに安堵した。ビデオショップの情景は遙か彼方に、ぽつんと残されて、いつかその点も、散って消えてしまうのだろう。私はここにいて、そこにはいない。それだけだ。