いくつもの週末

いくつもの週末 (集英社文庫)

いくつもの週末 (集英社文庫)


意図して避けてきた江國香織が、ついに手元にやってきてしまった。ある人から頂いたのだけれど、これは初江國としてはちょっと強烈すぎたかもしれない。なにせテーマは江國氏の結婚生活である。
彼女の文字の選び方や、言葉の選び方に関しては何も言わない。ただ彼女の描く、着地点のない居心地の悪さは、私が予想してきた通りのもので、ああ怖い作家だと思う。
私は自分ではどうしようもなく女であり、それは生物学的にとか、社会的にという分類が意味をなさないほど私に定着しているものなので、彼女の描く物語から逃げることができない。真綿でゆっくりと首を絞められるように、窒息しかけながらこの本を閉じた。閉じた瞬間、安堵したくらいだ。
そうして思い出したのは、あるとき同級生が言っていた、「あるのは愛じゃなくて情」という言葉だったり、母の「好きだからって理由で一緒にいるわけないじゃない」という言葉だったりする。言うまでもなく感情は一瞬で、だからそれを持続させようとすると途端に破綻をきたすわけだ。実際私には世の中の人たちがどうして四六時中一緒にいるのか理解できなかったのだけれど、ともかくそこに感情がなかったのだと思うと、理解できるようでもある。
関係には妥協と、惰性が必要で、それに潔癖性を示すようになってしまったら、もはや誰とも関係を築けなくなってしまうのだろう。私たちは、無為な時間がなければ、たぶんガラガラと壊れてしまう。