やるべきことはおおけれど

言い訳すべき向きはいくつもあれど、今日は両親をつれて、みなみ会館マリア・カラスの映画をみにいきました。わたしマリア・カラスが好きなんですけど、そう言うと、なぜかときどき「ああ、好きなひと多いよね」と吐き捨てるように言うひともあり、マリア・カラスが好きであることに後ろめたい気持ちがつきまとっていました。しかし、この映画をみて、私はやっぱりマリア・カラスが好きで、しかもその声が好きなのだと思いました。おそろしい正確さと表現力で音の並びから広大な世界を作り出す彼女の声を一度聴いてしまえば、動くことさえ許されないのではないかと思うほど、心臓を締め付けられるのです。何も考えられず、ただその声の前にひれ伏すような。
帰りの電車の中ではふたたびひゃっけん先生を読みながら、帽子のリボンに切符をしまうというくだりで、祖母が手袋の中に切符をしまっていたことを思い出しました。出かけるときには帽子と手袋を欠かさず、おそろいの靴と洋服、お気に入りの宝石を身につけていた祖母は、きっとおしゃれな人だったのでしょう。その祖母も、今はベッドの中から出ることさえままならない。人の衰える様子というのは、仕方のないこととわかっていても、もの悲しさのつきまとうものです。


映画「マリア・カラスの真実」は、京都みなみ会館で、30日までやってるみたい:
http://www.rcsmovie.co.jp/