あいだの話

縁あって、近々建築の話をすることになっているのだが、よく考えてみると私はそういう発表を準備なしに行ったことはない。たいてい、ひとつの発表のために半年ほど準備して、それでようやく体裁をなすといった具合だ。しかし今回は、決まってからほぼ一ヶ月、しかも仕事のためにほとんど時間を取れないまま今までやってきてしまい、いよいよ数日後に迫ってからようやく焦り始めた。
手伝ってくれることになっている方には申し訳ないことに、私はそれほど柔軟ではない。これまで行ってきた手法を突如変えることは難しい。だから、二日前までは自分の面白いと思うことを発表すればいいのだと思っていた。しかし、その方に指摘されて気がついたが、発表を行ううえは、単に自分が面白いだけでは済まされない。そこに集う諸々の人々が面白いと思えなくては、公に発表を行う意味がない。だから、私がこれまでぼやぼやと考えてきたことはすべてボツになった。
つまり、問題はそのテーマにあるのではなく、そのテーマによってそこに集う類の人々にどういう問題提起ができるかという点にある。それゆえ、よいテーマというのは、議論が紛糾するテーマである。誰もが大人しく「フーン」と聞いているのでは、成功した発表とは言えない。こうではない、ああではないと口に泡して叫び合わねばしてやったりという具合にはいかないのだ。
というわけで、今日明日でどうにか形になればよいのだが、いまいち自信がない。だからといって、ここにこうしてこれを書いていることが、何らかの言い訳になると思っているわけでもないのだが。人間そういうところが難しい。