夢日記:2XXX年のロボットたち

ロボット技術とサイボーグ技術の向上により、人間の生活水準は格段に向上したが、一方、個々のロボットたちが意識を持ち始めたことが、ロボットの廃棄を難しくしていた。
そうした中ω社が「火葬場見学ツアー」と称した廃棄実行計画を発表、たちまちのうちに人気を博し、ロボットたちは日々片道のツアー見学に自主的に、あるいは主人の命令で向かうこととなる。要するに見学ではなく、本当にこの世から葬られてしまうというわけだ。
目的別ロボットはそれほど自由な知性を有しないためにω社のような仕方で廃棄が可能だが、ヒューマノイド型のロボットは、ほぼ人間と変わらないためそのような手段では廃棄が難しい。そのためかなり初期の頃から、犯罪を犯した死刑囚というかたちで廃棄することになっている。主人公はそうしたロボットの一体。彼女は主人を傷つけたかどで投獄され、死を待つ身だが、あるとき見張りの男に陵辱されそうになり、男に小麦粉を振りかけて脱獄。ハリウッド映画のセオリー通り途中でいったん掴まりそうになるが、そこはセオリーなので地下組織の相方の手助けを受けて間一髪逃れ、ロープを登り切る。
さて、火葬場見学ツアーに訪れた目的別ロボットの3体は、実はこのω社の実体を暴き、ロボット仲間に広めんとしている地下組織のメンバーであった。3体は家事をまかなう清掃、調理、育児担当ロボットなのだが、なぜかおばさん口調で、見学を楽しむ主婦風情である。「あら、綺麗ねー」「ちょっとみてよ、こんなのついてるわよ」「これなら安心して死ねるわね」などなど。
ちなみに、目的別ロボットは、不信な動きをしたり、目的のために用いることができなくなった時点で廃棄となる。
「皆様、こちらが当施設最大の目玉でございます、リラックススペースでございます。睡眠性花粉を出す美しい花々や、健忘性の成分をもちますマジックマッシュルーム、癒しを保証する愛らしい動物たちに満ちたお部屋で、火葬までの時間を有意義に過ごしていただけます」
というアテンダントのアナウンスが入ると、ツアーはクライマックスである。巨大な空間が鉄扉の向こう側に開け、毒々しい色合いの森が現れる。観客から歓声があがる。ここに入ったが最後、目的別ロボットたちは外へ出ることはない。睡眠性花粉は強力な機能停止ガスであり、愛らしい動物たちはロボットにぶらさがり立ち往生させる重しでしかない。そうして次第に外の世界を忘れていくロボットたちは永遠に森の中にとどまることとなり、文字通り眠りにつくのである。
「ロボットたちは幸せな気分のまま眠りについていきいますので、心おきなく廃棄できます」というのがω社の人間たちに対する宣伝文句である。
さて3人組は「かわいいわねー」「あらっ、これ欲しいわ」などと言いながらさりげなく証拠となる愛らしいてんとうむしをブローチ代わりに服につけ、「ちょっとお手洗いに失礼するわね」とかなんとかいいながら森の前を離れる。3体の背後では、膨大な数のロボットたちが次々森へ吸い込まれていく。
3体はショッピングセンター風情の屋内を密談しながら進むが、係員(なぜか野々村真)に見つかり通報されてしまう。「やばいわね」「逃げましょう」というわけで、ダッシュしたところで目が覚める。