お能と狂言

ご縁があって狂言を見に行くことがあるのですが、今回は大阪・元気・能狂言というのにいってきました。狂言の演目は「伯母ヶ酒[おばがさけ]」、能の演目は「鉢木[はちのき]」でした。
能のほうの「鉢木」に、狂言師の名前があり、これはいったいどうしたことだろうと思っていたのですけど、要するに能の幕間に狂言を入れるといった趣向なのでした(間狂言[あいきょうげん]と言うのだそうです)。
「鉢木」は、落ちぶれた侍・常世が、僧となって身分を隠した執権・北条時頼を貧しいながらももてなして、その時の言葉違わず大事にかけつけた功績から、失った領地を取り戻すというお話しです。
で、その大事に駆けつけんとする侍の甲・乙・丙を狂言師が演じます。お能のお囃子と地謡の人たちとは、狂言の間中うしろに控えているのですね。狂言は、喋り口がお能とはずいぶん違い、はっきりと、おもしろおかしく進みます。その様子にはお能の真面目さを茶化すようなところがあって、お囃子と地謡の方がずいぶんと居心地悪そうにしていたのが可笑しかったです。
「伝統」になる前であれば、能のお囃子や地謡もバックバンド的なものとして控えていられたのでしょうが、現在では、お囃子も地謡もセットで能としてみますから、狂言の現在的な様子とずいぶんかけ離れて見えてしまったんでしょうか。お能を自然に楽しむには、もう少し時間がかかりそうです。