パプリカ

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『パプリカ』の面白さは半分以上が映像の展開の面白さであって、ストーリーについては特に、これといって新しいところはない。*1それから、監督のわざとらしい象徴主義(?)がちょっと鼻についたかもしれない。引用や、象徴、隠喩、が幾重にも折り重なって混ざり合い、全体として作品に貢献しているのなら良いのだが、どちらかというと、個々の要素がバラバラと出てきてしまっていて、もう一歩、物足りない。
それから凡人、秀才、天才、という描き方がかなり安直なのと、登場人物の感情の動きが、薄っぺらいところが気になる。安直とか薄っぺらいというのは、つまり曖昧さがほとんどない、ということ。すべて説明できてしまう。分からない部分の説明もすべて映画の中に収まってしまって、その外側を想像する必要がない。ちょっと、まっすぐすぎるような気がして、残念。またそれと関係するのだろうが、まったくリアリティがなかった。そういう風に作っているのかもしれない。
でも、夢を描いた部分は非常によくできていると思う。記憶や映像がおかしなところで繋がってしまう、不自然さや違和感が、よく出ていた。ただ、夢はもっと不気味で、不条理なところがあるのだけれど、『パプリカ』に描かれる夢はいつも滑稽で、真面目さがどんどん不真面目さに転換していってしまうところが、私の感覚とは違っていた。まぁ、でも、日常の中で夢を描くと滑稽になりがちであるというのは、そうなのかもしれない。
謎解きや読解を楽しめる映画ではないけれど、単純に映像の面白さを楽しめる映画だとは思う。原作を読んでみたい。

*1:原作は筒井康隆の同名小説。