君にだけ、とくべつだよ

おっきなクッキーが食べたいと思い、クッキーを焼いた。手の平くらいあるやつ。おかげで天板に三枚のせるのが精一杯だったけど、まぁ良いのだ。それで、オーブンの前で焼き上がりを待っていたんだけど、どうしたわけか洗濯をしなくちゃって思って、突然洗濯を始めた。うちの洗濯機は二槽式で、すごく手間がかかる。色物、汚れ物を分けて、洗って、洗って、すすいで、すすいで、ってようやく終盤にさしかかったころ、キッチンの方からきな臭い香りが漂ってきたんだ。焦った。慌ててオーブンを止めて、開けようと思ったけど、それはすさまじい勢いで黒い煙が内部に渦巻いている。こんなの開けたら家中すすだらけになっちゃう。仕方ないから、また待つことにした。待ってる間に洗濯し終わった洋服どもを干して、干して、叩いて干して、引っかけては伸ばして回して投げてってやってたら、かごの中が空になったのでキッチンに戻ったんだ。そうしたら、どうだい、煙はすっかりおさまっていた。計算通りだ。念のため内部を覗いてみたけど、黒煙はもう見あたらない。それで、そっと開けてみた。ゆっくり取り出してみた。いち、にの、さん。やったー!大成功。神の手だ。どうだいこの出来具合。クッキーから炭ができるなんて、もしかするとこれが天才ってやつなんじゃないか。