たくさんあること

買い物に出かけて、膨大な商品の山に呆然としてしまって、なにも買えずに帰ることがしばしばある。
たくさんのものは、物欲を刺激する前に、圧倒的なボリュームとしてわたしに迫ってくるために、それが対象であることをやめ、結局いったい何を欲していたのかわからなくなって途方にくれてしまうのだ。たくさんのものの中から選ぶという行為が、あまりに果てしないので、欲求は萎縮してもはやあわれな期待でしかなくなっている。この中にあるかもしれない、でも、わたしはそれをもう欲していない、という。
イメージが崩壊し、あるのはただ安っぽい何かだけ。期待は急速にしぼみ、あとには虚しいくらいの徒労感だけが残される。