かごのなか

ときどき、自意識に捕らわれたひとの書いたものをみると苦しくて仕方ない。かつての私を思い出させるからというよりも、なぜそこから抜け出せないのか考えると哀しいからだ。そして私は抜け出したはずの自分がもしかすると逃げ続けているだけなのではないかという気がして、もっと暗い気持ちになる。
そういうひとの書くものはどこか自虐的で、冷静で、鋭いので、私は恐ろしい気持ちになりながらも目を離すことができない。私は映画をみるようにして、彼らの書いたものを読む。私はけっしてその映画には登場しないと信じながら、読み続けているのだ。その信念もまた保留された態度であることを恐れながら。