藤田展

asukakyoko2006-07-07

おかっぱで丸眼鏡でチョビヒゲである、愛すべき藤田おやじの展覧会へ行ってきた。
率直に申し上げて、良かった。


そもそも、彼の少女漫画的なところが私はとても苦手だったが、今回ブラジル時代に手がけた作品をみて、その印象はかなり変わった。精緻に、目線のまっすぐで生き生きとした人物が描かれ、それは「素晴らしき乳白色」と謳われた彼のマチエールからはかけ離れたものではあったが、むしろ、彼の才能をよりよく表出させていたと思う。言ってしまえば日本画的、なのだが、パリ時代のものよりも無理がなく、非常に好感を持った。


また、驚かされたのはその戦争画である。
ぞっとするほど生々しいのだ。
それは悲惨さを通り越し、エロティックですらあった。
彼の裸婦画からは何も感じられず、むしろ、洋画という世界へのもどかしさ(あるいは作為)の方が強く見えてしまったが、その戦争画からは、恐ろしいほどの、生命の、暗い躍動を感じた*1
不謹慎かもしれないのだが、私はその絵を前にしてとても胸が高鳴った。その光景は現実には存在しなかったかもしれないのに*2、驚くほどの熱量をもって、私に迫ってきたのだから。
私は長らく、絵から受けるそのような感じを忘れていて、だから、今回藤田展を見られたことは、よい刺激になったと思う。


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もしこれから行かれる方は、絶対に平日に行かれますよう。
今回平日の日中でしたが、人に煩わされることが多く、ましてや土日祝日がどのような状態なのかと思うと、決してお勧めはできません。


京都国立近代美術館藤田嗣治展 >>
http://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionArchive/2006/347.html


藤田嗣治展(NHKきんきメディアプラン) >>
http://foujita.exh.jp/

*1:藤田は、そもそも暗い画風を好んだようで、それは卒業制作の自画像について、師の黒田清輝ともめた点からもわかる。

*2:おそらく、決して存在しなかった。